2002-10-03
 バリ島珍道中(2)
 
いつの間にやら秋めいてまいりました。前回の「米二情報」から1ヶ月半あまり…。ちょっとサボってしまいましたが、久しぶりに長いのをお届けいたします。

さて、昨年夏のバリ旅行のお話の続きです。ガルーダ・インドネシア航空の訳の分からんトラブルで、うちの家族のバリ到着は11時間半も遅れました。ホテルへ着いたのは夜明け前。「クラブ・バリ・ミラージュ」はバリ島南部のヌサ・ドゥアにある小ぢんまりとしたホテルで、すぐそばが砂浜の海岸です。このホテルの敷地内で目印の白いリボンを腕に巻いていると、食事は全部タダ、プール等の施設もほとんどタダでした。

夜が明けてきたので海岸へ出てみました。まだほとんど人は歩いてません。マリンスポーツ屋のおっさんがウロウロしてます。ごっつい人で色は真っ黒。でも、顔は日本人とよく似てます。同じ民族なんやろか? よく見ると誰かに似てる。「アッ、コング桑田や」。関西の劇団「リリパット・アーミー」のコング桑田さんそっくりだったのです。関西の方はご存じでしょう。京阪電車のコマーシャル、おけいはんのお父さんをやってる「濃い〜人」です。それも一人やない。あっちこっちにコング桑田が歩いてるのです。

他にも似た人というのが多かった。毎晩、ホテルのレストランで演奏してたミュージシャンの一人が、後輩の桂出丸君にそっくり。ウソじゃありません。写真を撮って出丸君に見せたら、「これは僕の弟です」と言うてましたから…。

そのコング桑田がこっちへ向かって歩いてくるではありませんか。目をそらして、すぐにホテルへ逃げ帰る体勢でいると、「カメノシマ、行コウ。カメノシマ」と日本語で話しかけてきます。船で亀がたくさん居る島へ連れてくれると言うのです。これもタダかと思ったらお金は要るらしい。

インドネシアの通貨はルピアと言って、その時のレートでは1円が68ルピアでした。こない違うと勘が狂います。1万ルピアといっても、たった147円なのです。ややこしいてしゃあない…。電卓は必需品でウエスト・ポーチに放り込んであります。まだ予定が決まってなかったので、電卓片手に一家4人で2千円ほどに値切って乗せてもらうことにしました。

船頭さん(とは呼ばないか…)はコング桑田とは違う人でした。船の床はガラスになっていて、魚が泳いでいるのが見えます。周りはマリンスポーツ花盛り。一番目立つのがパラセイリング。パラシュートをつけてモーターボートに引っ張ってもらって空を飛んでます。それを横目に見ながら、船は北へ北へ…。「カメの島」へ着きました。でも、さっきのところと地続きですよ。「何処が島やねん!」と突っ込みながら船を降りて、浜をジャブジャブ歩いて陸へ上がりました。

そこで待ってたのはサングラスをかけたコング桑田でした。「こんなおっさんしか居てへんのんかい!」 また突っ込みながら入って行くと、そこに居たのはウミガメの大群でした。わたしゃミドリガメでも居るんかと思てましたがな。大きいのから小さいのまでウヨウヨ。一番大きいウミガメに跨って写真を撮りました。

「コンナンモ居ルヨ」とコングさんが連れてきたのは大きなオウム。これを私の腕に乗せて写真撮影。爪が痛いなぁと思てたら、その隙に首になんや乗せられた。ニシキヘビですがな。重いんです、これが。ふっと見たら、嫁はんと子どもは逃げとおる…。「おーい、薄情者ーッ!」

で、ニシキヘビの肌ざわりですが、これがヌルヌルでもサラサラでもない。シトシトなんです。わりと綺麗なお肌なのでありました。すっかり馴染んで記念写真。そのあとも次々に動物が出てくる。猿、大きなコウモリ、コンドル…。コウモリは私の手にぶら下がりよったけど、こいつが一番気色悪かった。でも、一番危険なのはコンドルなんですと。さわっちゃダメと言うてました。

猿と遊んでたら、案内のコングさんがモジモジしてる。売店を見て行ってほしいと言う。買うのは自由だからと見せてもらいました。ここはべっ甲製品のオンパレード。「ワシントン条約、ダイジョウブ」と言うてます。何が大丈夫なんか知らんけど、ちと怪しい…。

嫁と娘はブレスレットを買ってました。さすがにちょっと高かったみたい。何十万ルピアって言ってましたから。私が買ったのはべっ甲の耳掻き…。贅沢やねぇ。たしかUSJでも耳掻きを買いましたっけ。安いもん…。お金を出そうと思ったら、ブレスレットのおまけでタダでくれた。また嫁はんに礼を言わんならん…。

そのあと、バナナボートに乗ってちょっとスリルを味わいました。パラセイリングも大層なわりに高くない。2千円ほどやったかな? 嫁と子は、勇気があるならやってみろと言う。お父さんは勇気がないねんからしょうがない。まごまごしてるとパラセイリングはおしまいになりました。満潮の時しかできないらしい。残念がって見せたけど、嫁はんの目は冷たかった…。

プラザ・バリという大きなショッピング・センターへ行くことにしました。ホテルからタクシーに乗って行けばタクシー代はプラザ・バリが払ってくれるという。私はこういう余計なサービスが大嫌いなんです。その分、ふんだくるのに違いありません。

少し離れた大きなホテルからシャトルバスが出てるので、これに乗ることにしました。そこまでは歩いて行こうと私は提案しました。知らない土地へ来たら、そこを歩く。これは旅に出た時の私のモットーです。

で、歩き出したら、その大きなホテルが遠いのです。遠〜い遠〜い…。ガイドブックの地図で見たらスグやのに。しかも道が狭くて歩きにくい。歩道もない。車やバイクは猛スピードで至近距離を駆け抜けて行きます。「おーい、日本やったら、人が居てたらスピード落とすぞー」と叫んでも無駄です。危ないし、砂埃はかぶるし、タクシーは「乗レ、乗レ」とうるさいし、子どもはボヤくし、嫁はんの機嫌は悪いし…。

とうとうホテルへ着く前にシャトルバスの発車時刻が過ぎてしまいました。万事休す。思い切ってタクシーに乗ることにしました。決断が遅いなぁ…。

今度はタクシーが来ません。さっきまで一杯通ってたやないかい…。トボトボ歩きながら後ろを振り返ってタクシーを待ちました。ようやく一番安全と本に書いてあった水色のタクシーが来たので、乗り込みました。どこ製の車か知らんけど、日本車ならカローラクラス。

タクシーに乗ったら必ずメーターを倒してあるか確認することと本にありました。悪徳運転手はメーターを使わないでふっかけてくるそうです。メーターはたしかに倒れてます。料金をプラザ・バリが払うというのは良いシステムだと思いました。この安心は何ものにも代え難いものです。さっきまではボロクソに言うてましたが…。

さ、着きました。メーターは2万ルピアを超えています。払うのはお店です。係の人がメーターをチェックして、私に何処から乗ったのかと訊いてきました。ヌサ・ドゥアの道から、と言ったら、「それならご自分でお支払いください」と、こんなことを言うではないですか。ホテルから乗った場合だけ支払うんですと。

「そんなこと書いてなかったぞ。こっちは払ってもらうのが気の毒だからシャトルバスに乗ろうと思ったらホテルが遠くて間に合わなくて道がせまくて埃かぶって嫁はんが…」

日本語の通じるところでよかった。言うだけのことをまくしたててやった。こんなんの相手してるより払った方が良いと判断したのでしょう。ちゃんと払ってくれました。あとで電卓で計算したら2万ルピアは日本円で294円…。自分で払たらよかった…。この時、気がついたのです。バリではタクシーは安いんや…。

まだまだつづく。